消化器外科のご案内
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外科研修(後期研修)、初期臨床研修についての情報がご覧になれます。

当院消化器外科の得意とするところは、肝臓、胆道、膵臓といった高難度手術と、胃がん、大腸がんに対する腹腔鏡手術・ロボット手術です。日本肝胆膵外科高度技能指導医・専門医が3名おり、胃、大腸、肝臓分野の日本内視鏡外科学会技術認定医が計3名在籍しております。大学病院やがんセンターでの専門的な研修を行った医師が各領域におり、常に最新の癌治療を取り入れています。最新の治療であるロボット手術は胃、大腸、肝臓、膵臓の領域で行っています。手術後の抗がん剤治療につきましても、腫瘍内科と相談しながら、積極的に行っています。
主な診療内容
当科で扱っている病気は、胃がん、肝臓がん、胆のう・胆管がん、膵臓がん、大腸(結腸・直腸)がん、肺がんなどの悪性腫瘍の他、胆のう結石、胆のう炎、虫垂炎、ソケイヘルニア(脱腸)、自然気胸、痔、痔ろうなど、多岐にわたります。特に肝臓、胆のう・胆管、膵臓や胃腸の疾患を得意にしています。また、急性の胆のう炎や虫垂炎は早めに治療することで患者さんが後々まで心配することのないようにします。手術だけでなく、あらゆる手段を尽くして治療にあたります。セカンドオピニオンも受け付けています。
特色
私たちは患者さんの病気や現在の病状の説明を尽くしていきます。手術というのは患者さんや家族にとって大きな負担に感じられて当然のものです。ですから、手術の前には、なぜ手術が必要なのか、手術以外の方法はどうか、手術方法はどういうものか、手術の危険性はどの程度か、手術後の生活は今と違うのか、など丁寧に説明いたします。ご自身の病気を理解して、一緒に考えて治療していくのが我々の目指す医療です。
病気ごとの詳しいページ
肝臓がんについて
肝臓がんは「原発性肝癌」と「転移性肝がん」があります。
・原発性肝がん : 肝細胞癌、肝内胆管癌
・転移性肝がん : 他の臓器に原発の腫瘍があり、その腫瘍が肝臓に転移してできた腫瘍
ともに腫瘍の大きさや数、肝臓の状態によってさまざまな治療法があり、最適な治療を検討し患者様に提供しています。
肝臓の手術について
肝臓は血流が豊富な組織であり、肝機能や残肝容積(肝切除後に残る肝臓の容積)により切除術式や治療戦略が変わることから、手術の専門性が高いと考えられております。
当科は複数名の専門医(肝胆膵高度技能指導医、肝胆膵高度技能専門医、肝臓専門医、腹腔鏡技術認定医(肝))が在籍しており、県内でも有数の専門施設となっております。
腹腔鏡下肝切除
当院では積極的に腹腔鏡による肝切除を行っております。
腹腔鏡鏡手術のメリットは傷が小さく、傷の痛みが少ないため術後の回復が早いことが挙げられます。
4Kカメラの導入により拡大視効果が得られ、手術の精度も向上して参りました。
腫瘍の数や大きさ、存在部位によって腹腔鏡手術の適応にならないこともありますが、安全性と根治性を考慮しながら、積極的に腹腔鏡手術を行っています。

大腸癌肝転移の治療について
肝臓は大腸癌をはじめとする多くの癌の好発部位として知られています。
特に大腸癌は35-55%で肝臓に転移再発するといわれておりますが、完全切除により長期生存が期待できると言われております。
化学療法を中心とした非手術治療の5年生存率が20%に満たないのに対し、肝転移の完全切除を遂行した患者様の5年生存率は50%を超えると言われております。
大腸癌肝転移の手術について
すべての大腸癌肝転移に手術が可能というわけではありません。手術による腫瘍の完全切除が、化学療法の導入・継続と比較して有効と判断され、安全に手術が行える場合に手術を提案します。
具体的には残肝容積や他臓器転移の有無などによって手術適応を決定しており、再発リスクが高い場合には術前化学療法を併用した手術を提案しております。
詳細な病変の評価
造影CT検査(CECT)では検出できない転移病変も造影MRI検査(Gd-EOB-MRI)や造影超音波検査を駆使して検出し、治療戦略を提案します。


こういった詳細な検査の積み重ねにより病変の遺残やメリットの少ない過大手術の回避に努めています。
詳細な3Dシュミレーションと治療計画
3Dシュミレーションソフトを用いて、転移性肝がんと主要な肝臓の血管との位置関係を把握し、綿密な切除計画を立案し、手術を行っております。


手術後の残肝容積の計算も可能であり、術後の肝機能障害、肝不全のリスクの検討も可能となっております。
大腸がん肝転移外来
当院では大腸癌肝転移の手術を含めた包括的な治療の提案を目的とした大腸がん肝転移外来を開設しております。お気軽にお問い合わせください。
主治医の先生方へ
手術適応や集学的治療の治療方針についてのご相談も承っております。当院での術前、術後補助化学療法、経過観察フォローも含めて対応可能です。お気軽にご相談ください。
膵臓の腫瘍について
膵がん、膵嚢胞性腫瘍(IPMN、MCN)、膵内分泌腫瘍
膵がん
早期の膵がんは症状がほとんどなく、進行してから発見されることがほとんどです。
腹痛や体重減少、黄疸の出現、糖尿病の悪化などを契機に発見されます。
膵嚢胞性腫瘍(IPMN、MCN)
膵嚢胞性腫瘍であるIPMNやMCNは粘液産生性の膵腫瘍であり、膵がんの前がん病変であると考えられています。どちらの腫瘍も症状はないことが多く、人間ドックや他疾患の検査で偶発的に発見されることがほとんどです。
IPMNに関しては経過観察となることも多いですが、膵液を消化管に送り出す「主膵管の拡張」や「黄疸の症状」、「造影される5mm以上の結節」がある場合には癌化のリスクが高いとされ、手術適応となります。
当院では専門医による超音波内視鏡などを駆使した詳細な精査が可能です。
膵臓の手術(膵頭十二指腸、膵体尾部切除、膵全摘)
膵頭十二指腸切除

膵頭部腫瘍の主な治療術式は膵頭部、胆管および胆嚢、十二指腸とその周囲のリンパ節や神経叢(しんけいそう)を一括して切除する膵頭十二指腸切除が行われています。
切除に伴い、食物の通り道である消化管と消化酵素(膵臓からの膵液、肝臓からの胆汁)の経路を再建する必要があります。
残存小腸と膵臓、胆管、胃を吻合し、新たな消化管経路を形成します。
膵液瘻
小腸と膵臓の吻合は一般的に縫合不全を起こしやすいことが知られており、膵液がおなかの中に漏れてしまうことを膵液瘻とよびます。
膵頭十二指腸切除術後の膵液瘻の発生率はハイボリュームセンターとよばれる高度医療機関からの報告でも6-33%と比較的高確率で生じることが知られております。重症化すると腹腔内膿瘍を形成したり、その影響で動脈瘤が形成され、致死的な出血につながることがあります。
当院での膵液瘻の発生率は14%であり、2015年以降膵液瘻を契機とした致死的な合併症や追加治療の発生がないことを2021年消化器外科学会総会で報告致しました。
腹腔鏡下/ロボット支援下膵体尾部切除
膵臓がんは進行して発見されることが多いですが、疾患の根治性や安全性が担保された場合には積極的に腹腔鏡手術をご提案致します。
腹腔鏡手術は傷が小さく、低侵襲であることから術後の回復が早いというメリットがあります。


腹腔鏡/ロボット支援下手術による膵切離


主治医の先生方へ
膵腫瘍は発見・診断が難しい疾患です。
当院では胆膵内科医による超音波内視鏡診断・生検も可能です。
ロボット支援下手術による低侵襲手術や膵がんに対する血管合併切除手術なども行っておりますので、お気軽にご紹介下さい。