平成23年10月に新設された乳腺・甲状腺疾患を担当する診療科です。今までは外科のスタッフが担当しておりましたが、乳腺専門医である片寄喜久とスタッフの齊藤絵梨子が担当いたします。よろしくお願いいたします。

当科の診療モットーは以下のとおりです。

  • 心に響く患者さんの気持ちにより添った診療
  • 技術・エビデンス・サイエンスに基づく診療
  • 患者さんの意向を十分尊重した診療
  • 最新の医療機器を用いた最良の診断・治療

手術・抗がん剤治療・放射線治療などすべての分野で、低侵襲でより効果の高い最新の医療を行えるよう日々努力しております。

また、チーム医療を実践し、医師・看護師などのスタッフがそれぞれのnurse専門性を生かした、患者さんが「この病院でよかった」と言っていただけるような医療を目指しておりますので、お気づきの点がありましたら是非スタッフにお声かけください。日々改善してまいります。

イラスト:看護師

また、東北で初めて断層撮影が可能なマンモグラフィを導入しました。詳細は下記をご参照ください。更に今後、遺伝子を検索する乳がんの転移診断用機器や、最新型のMRIを導入する予定であり、皆さんに最良の医療を提供できる体制を整えております。

乳がんで治療を受けられる方には、病状・治療法の選択基準・治療法・化学療法・ホルモン療法・放射線療法について詳しく説明いたします。不明な点はいつでもお気軽に主治医にお尋ねください。

乳腺・内分泌外科でお引き受けできる疾患

乳腺

乳がん(乳房再建術も相談可能です。)、乳腺症、乳腺線維腺腫、乳腺葉状腫瘍、乳管内乳頭腫 乳がん検診など乳腺疾患全般

甲状腺・副甲状腺(上皮小体)医療の導入)

甲状腺がん、甲状腺腺腫、バセドウ病、橋本病(慢性甲状腺炎)、副甲状腺機能亢進症(腺腫、過形成) など

乳腺・内分泌外科で行っている検査

一般の血液、肝機能、尿検査、腫瘍マーカーなどの検査

超音波検査 : 乳腺・甲状腺疾患

超音波を使って乳腺・甲状腺の状態を診察します。ゼリーを塗って小さな装置を当てるだけですので、全く痛くない検査です。乳腺・甲状腺の腫瘍などの診断に特に有効です。 またエラストグラフィというしこりの堅さを判別する装置もあります。より確実な診断が可能となり、良性と思われる柔らかいしこりには必要のない検査を避けることができるようになりました。

マンモグラフィ : 乳腺疾患

乳腺のレントゲン検査です。SELENIA Dimensionsという最新の断層撮影が可能なマンモグラフィを導入しました。

写真:マンモグラフィ

今までは乳房を圧迫し乳房全体を一度に全体を撮影していました。この装置では圧迫することは変わりませんが、圧迫した乳房を1°間隔で15枚撮像し、コンピュータで即座に解析し、得られたデータを1mm事の画像に再構築します。(これを断層撮影:トモグラフィと言います。)

イラスト:マンモグラフィ

再構築した画像は連続した画像として表示され、あたかも動画を見ているように乳房内を観察する事ができます。これにより以前はしこりと正常乳腺が重なってしこりがはっきりと鑑別できなかった小さなしこりも、より鮮明に発見する事が可能となりました。

イラスト:マンモグラフィによるしこりの判明

この撮影法を乳がん検診の二次精査症例で使用した結果から、以前は腫瘍と思われていた乳房の影の約7割が正常と診断できました。乳腺の重なりを無くすことで、正常な乳腺と腫瘍を鑑別が可能な事が判明しました。
ただ、乳房撮影回数が増加することで被曝量が増加しますが、通常の撮影に断層撮影を追加しても、国の基準である1回の被曝量3mGyを超えることはほとんどありませんので、被曝による健康被害の心配はありません。

以上から、当院ではこの新しい断層撮影法を乳がん検診に1月から応用しております。詳細は下記をクリックしてください。

これらのマンモグラフィの撮影は資格を有した女性レントゲン技師が担当しておりますので、安心して撮影いただけます。また、読影に関しては検診マンモグラフィ読影認定医が責任を持って読影しておりますのでご安心ください。

穿刺吸引細胞診 : 乳腺・甲状腺疾患

乳腺や甲状腺に腫瘍があった場合、それが悪性か良性かを正確に判断するため、注射器で吸い上げて細胞を採取します。用いる針の太さは普通の筋肉注射で使っているものと同じでちょっと痛みがありますが、すぐに終了しますので怖がらないでください。

コアニードル生検・吸引式生検 : 乳腺疾患

穿刺吸引細胞診で良性か悪性かはっきり診断がつかなかった場合、約1mmの専用の針を刺して組織を採取します。これも局所麻酔で行いますので、痛みはほとんどありません。更に採取する組織量が必要な場合は、吸引式針生検(マンモトーム生検:4mmの切開です。)も行っており、的確な診断が可能となりました。。

ステレオガイド下マンモトーム生検 : 乳腺疾患

乳がんでは、触診や超音波検査では異常がなくても、マンモグラフィでがんの部分にカルシウムが沈着(石灰化)していて発見されることがあります。このような石灰化で発見されるがんの診断には、穿刺吸引細胞診や通常の針生検が使えませんので、マンモグラフィで石灰化を確認しながら行うステレオガイド下マンモトーム生検を行っております。

乳がんに対する治療

早期診断

上記機器を有効に活用して乳がんを早期に発見・診断し、早期治療を目指しております。

手術

乳房温存術と乳房切除術があります。現在は早期発見される方が多くなり、乳房温存術の割合が約3分の2まで上がっております。CTやMRIなどを用いて、しこりの広がりを正確に判断し、最小の切除範囲にとどめるようにし、整容性を高める努力を続けております。

また、センチネルリンパ節生検を行い、腋の下のリンパ節に転移がなければリンパ節の全切除を回避する、患者さんに優しい検査方法も取り入れております。当院ではこの検査にアイソトープは使用せず、身体に優しい色素を用いております。

イラスト:手術のイメージ

リンパ節への転移診断は、乳がんの遺伝子を検索するOSNA法を25年度に導入予定です。

乳房温存術が増加しているにもかかわらず、治療のためどうしても乳房全体を切除する必要がある方もいらっしゃいます。乳房を全切除する事による乳房喪失感は非常に辛いものです。このような場合、新たに乳房を作る乳房再建という方法があります。大まかに言って切除した部分に自分の筋肉(自家組織)を当てる場合や、シリコンインプラントなどの人工物で置換する方法があります。当院では自家組織やインプラントのどちらでも対応できる体制を整えておりますので、ご希望の方は遠慮無くご相談ください。専門の形成外科医と連携して整容性の向上に努めております。学にいらしてください。お待ちしています。

化学療法

現在は手術前に抗がん剤を使用し、しこりを小さく、あるいは消失させてから手術を行うことも多くなってきました。しこりを小さくすることで、乳房を全部摘出することが回避できたり、更に小さな侵襲(傷や乳房の変形が少ない)の手術が可能となります。これを術前化学療法と言います。はじめに手術ができないともうだめなのか、と考える方がいらっしゃいますが、そんなことはありません。現在は手術前にしこりを詳しく調べることで、抗がん剤の効果がある程度予測できます。抗がん剤の効果が高い方は是非、はじめに抗がん剤を受けられ、より侵襲の少ない手術を受けていただくことをお勧めします。

化手術後の治療

摘出したしこりの性格をを詳しく調べて、再発予防のためホルモン剤を内服したり、放射線治療を行ったり、追加の抗がん剤の投与などを行います。場合によっては手術のみで治療が終了する方もいらっしゃいますが、より完治を目指す意味で必要な追加の治療は是非受けていただくことをお勧めします。疑問点は主治医に遠慮無くご相談ください。

家族性・遺伝性乳がんに対する相談

ご家族や親族に乳がんの方がいらっしゃると、自分もなるのでは、と心配される方が多いと思います。多くの乳がんは遺伝子の突然変異ですが、まれに遺伝する方がいらっしゃいます。ご心配の場合は、当院でも遺伝子カウンセリング外来が開設されましたので、専門の医師への紹介やカウンセリングが可能ですので、遠慮無くご相談ください。

乳がんの診断、治療法などに疑問がある場合など、別の医師に意見を聞くセカンドオピニオンも当科では積極的にお勧めしております。疑問点などが解決できない場合は、遠慮は無用ですので、セカンドオピニオンの希望を伝えてください。逆に他院からのセカンドオピニオンも受け付けておりますので、ご利用ください。

甲状腺疾患

甲状腺は身体の代謝をつかさどる2種類の甲状腺ホルモンを分泌している重要な臓器です。ホルモンの過不足はいろいろな体調の変化を来しますので、担当医師にご相談ください。

一部で昆布や海草などの過剰摂取は甲状腺に悪いと言われており、食べないように言われることがあるようですが、これは間違いです。毎日山盛りの海藻や昆布を食する習慣は皆さんお持ちではないと思います。全く摂取しなくなると、甲状腺ホルモンの原料であるヨードが不足し、体調に悪影響を与えます。適度な摂取を心がけてください。

甲状腺疾患の診断には上記に書きました、超音波検査や穿刺吸引細胞診が主として行われます。また甲状腺ホルモンなどの採血も行われ、総合的に判断し、手術や内服薬の投与の可否を判断します。手術となった際はCTなどを追加します。

甲状腺癌のおよそ9割は非常におとなしいタイプですので、癌と診断されてもあわてず的確な治療法がありますので、よく医師とご相談ください。

イラスト:処方箋

乳腺・甲状腺疾患は女性に多い疾患です。受診することをためらうことも多いと思いますが、おかしいなと思ったら迷わず受診してください。

乳がん検診で乳腺や甲状腺で要精査となられた方の二次精査機関として、当院は直ちに診療できる体制を整えておりますので、予約センターを活用して受診いただくことをお勧めします。

医師資格

役職科名名前資格
科長乳腺・内分泌外科片寄喜久・日本外科学会専門医
・日本乳癌学会乳腺専門医、認定医、評議員
・日本消化器外科学会認定医
・日本乳癌検診学会評議員
・日本甲状腺外科学会評議員
・検診マンモグラフィ読影認定医
・日本乳房オンコプラスティックサージャリー学会評議員

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