脳神経内科

脳神経内科について

 脳神経内科は脳、脊髄、末梢神経、筋肉に関わる多くの病気の患者さんを診断・治療しています。患者さんの全身を診察し、脳や神経の画像、内科的な検査データなどをみて「病気の正体」を突き止めます。当科では、診断、治療が比較的特殊な神経難病のみならず、脳卒中、てんかん、認知症、パーキンソン病などよくみられる病気に対しての診断、内科的治療に力を入れております。

以下、代表的な疾患とその診断・治療について触れます。

1. 脳卒中:急性期のアルテプラーゼ血栓溶解療法、慢性期のボトックス治療

 発症超急性期脳梗塞におけるアルテプラーゼ静注療法(血栓溶解療法)を行っております。この治療では、麻痺、ろれつが回らない、半身のしびれなどの神経症状が発症してから4.5時間以内に注射薬にて強力に血栓を溶かす事を試み、症状の劇的な改善が期待できます。当科は脳卒中学会専門医を1名擁し脳卒中学会教育施設に認定されており、学会の適正治療指針に基づいて治療適応を判断します。

 慢性期では脳卒中後遺症としてみられる運動障害のひとつ、痙縮(けいしゅく)に対するボツリヌス療法(ボトックス治療)を積極的に行っております。痙縮とは、手足の筋肉がつっぱり動かしにくくなり、ひどい時には一定の肢位で固まってしまう状態のことです。手の指が握ったままで開きづらい、肘が曲がり伸ばしづらい、膝や足先が伸びて曲げづらいなどの症状により、日常生活に支障をきたします。ボツリヌス療法で用いるボトックスというお薬には、筋肉を緊張させている神経の働きを抑える作用があるため、筋肉の緊張をやわらげ痙縮を改善することができます。

2. てんかん:デジタル脳波・ビデオ同時記録装置や長時間持続脳波モニタリングを利用したてんかん診断

 「てんかん」は子供の病気、というイメージが強いかもしれませんが、高齢者社会に伴い65歳以上で発症する患者が増加しております。「てんかん」は大脳の神経細胞に突然発生する電気的な過剰興奮により繰り返す発作(てんかん発作)を特徴とします。てんかん発作時の症状は、大脳の過剰興奮が発生する場所によって様々です。一般的には大脳全体に過剰興奮が生じ、意識がなくなると同時に「けいれん」と呼ばれる手足をガクガクと一定のリズムで曲げ延ばしする間代発作や、手足が突っ張り体が硬くなる強直発作がなじみのある発作と言えます。しかし、高齢者てんかんで過剰興奮する場所は大脳の一部であることが多く、発作とはわかりにくい症状を呈し見逃されることも多くなります。以下に高齢者てんかんの代表的な発作症状を記します。30秒から3分ほど続くのが典型です。

  • 自動症:体の一部や全身の奇妙な反復性の動きの事を言います。口をモグモグ、手をモソモソ動かす症状が代表的です。
  • 動作の停止:目を開けたまま動作が止まり、反応が無くなります。
  • 一過性の認知障害:自分がどこにいるのかわからなくなる(見当識障害)、記憶力がなくなる、話が出来なくなる・理解できなくなる、使い慣れている物が使えなくなる、など。

 このような異常言動を一過性に呈した場合は、レビー小体型認知症、せん妄状態、一過性脳虚血発作、失神発作との鑑別が重要となります。また高齢者てんかんでは、非痙攣性てんかん重責状態や発作後のもうろう状態が長く続き、意識障害や錯乱状態が数日間持続することもあります。そのような場合、「認知症の発症または悪化」と考えられてしまうケースも見受けます。 当科では患者さんの映像とデジタル脳波を同時に記録できる「デジタル脳波・ビデオ同時記録装置」を導入し、「てんかん」の診断に役立てております。また、非痙攣性てんかん重責発作が疑われる方においては、集中治療室にて長時間持続脳波モニタリングシステムを導入し、患者さんの経時的な脳波変化を捉え、早期治療介入に結び付けております。

3. 認知症:高次機能障害評価による認知症鑑別診断と適切な医療介入

 当科は認知症疾患医療センターの一部を担うのみならず、認知症学会専門医を1名擁し認知症学会教育施設に認定されており、特に非アルツハイマー型認知症の鑑別診断に力を入れております。認知症では、疾患特異的な異常蛋白の脳蓄積や血管障害にて脳が損傷を受け、様々な高次機能障害が生じます。高次機能とは、「考える」「判断する」「予測する」といった人間として社会活動を営む上での重要な精神活動を指し、認知症は高次機能障害を来す代表的疾患と言えます。高次機能障害ではいくつかの代表的症状があり、認知症によって来しやすい症状が異なっております。

 例えば、認知症にて半数以上を占めるとされるアルツハイマー病では記憶障害(物忘れ)が基本的診断に必須ですが、非アルツハイマー型では様相が異なります。レビー小体型認知症では、注意障害(例:物事に集中できない、周囲に注意を向けられない)、遂行機能障害(例:物事の段取りが悪い、状況変化に臨機応変に対応できない)、視空間認知障害(例:道に迷うようになる、車の車庫入れができない)の高次機能障害が初期に目立ちます。血管性認知症でも注意力障害と遂行機能障害の存在が診断に必須とされ、前頭側頭型認知症では、社会的行動障害(例:情動がコントロール出来ない、一つの事に固執してしまう)や失語症(例:言葉が出てこない、話の内容が理解できない)が診断に必須とされます。また、「タウオパチー」の代表疾患である大脳皮質基底核変性症や進行性核上性麻痺では失行症(例:箸やはさみの使い方がわからない、ズボンの履き方がわからない)を呈する事があります。

 認知症診療において高次機能障害を正確の把握する事は2つの点で重要です。一つ目は高次機能評価が認知症診断に繋がる点です。世界的に用いられている各認知症疾患の診断基準では、先に述べた高次機能障害の証明が必須とされており、脳血流シンチ検査やMRIなどの画像検査はあくまでも補助的な位置づけとなっております。二つ目は、治療としてのリハビリテーションに繋がる点です。認知症患者さん各々で特に障害されている高次機能障害を正確に把握する事で、機能訓練や代償手段獲得訓練、周囲の人々や環境への働きかけがより適切なものとなります。

 我々は、認知症が考えられる患者さんの主訴からどの高次機能障害が存在するのかを推察し、その存在を証明するために様々な神経心理学検査を臨床心理士やリハビリテーション科に協力いただきながら評価しております。

当科で可能な代表的神経心理学検査

  • 知能全般:ウエクスラー知能検査(WAIS-III→IVへ移行予定)、アルツハイマー病尺度評価(ADAS-cog)
  • 記憶力:ウエクスラー記憶検査(WMS-R)、リバーミード行動記憶検査(RBMT)
  • 遂行機能、社会的行動障害:遂行機能障害症候群の行動評価(BADS)、ウィスコンシンカード分類課題(WCST)
  • 注意力:標準注意評価法(CAT)
  • 視空間認知障害:標準高次視知覚検査(VPTA)
  • 失語症:標準失語症検査(SLTA)、失語症構文検査(STA)
  • 失行症:標準高次動作性検査(SPTA)

 また、高次機能評価以外では、タウオパチーを呈する認知症疾患に関して「髄液リン酸化タウ検査」、レビー小体型認知症やパーキンソン病に伴う認知症の早期診断として注目されている「嗅覚障害検査」「自律神経機能検査」「脳波検査」などにも対応しております。

4.パーキンソン病の「レボドパ・カルビドパ配合経腸用液(LCIG; デュオドーパ®)療法」

 パーキンソン病は、治療早期は薬が効きやすく、症状を十分改善させる事ができます(ハネムーン期)。しかし、病状の進行とともに薬の効果が出る濃度幅が狭くなり、薬が効きすぎてしまい体がくねくね動いてしまう状態(ジスキネジア)や、薬剤効果が持続せず3~4時間おきに内服をしないと効果が切れオフ状態(ウェアリングオフ)といった“運動合併症”が生じることがあります(図1)。

 これら運動合併症に対しては、これまで、まずは内服薬や張り薬の調整で対応し、それが困難であれば脳深部刺激療法(DBS)という外科的治療法検討のために他県施設へ紹介して参りました。しかし、2016年の9月からDBSに匹敵する治療法、「レボドパ・カルビドパ配合経腸用液(LCIG; デュオドーパ®)療法」を本邦で行うことが可能となり、当施設は秋田県内で最も早く同療法を導入し治療経験を積み重ねて参りました。これは、図2のように、内視鏡を使用して胃ろうを造設し、空腸までチューブを挿入、チューブに体外式ポンプを繋ぐことでレボドパ製剤を持続的に投与する事が可能となります。パーキンソン病進行期では、運動合併症を軽減するために少量のレボドパ製剤を何回にも分けて内服せざるを得ないのですが、患者さん負担が大きく、血中濃度の「山」と「谷」を完全に消失させることが出来ず症状は残存する傾向にあります。LCIG療法ではポンプを用いて一定速度で薬を投与し続ける事が可能となり、血中濃度を一定に保つ事でウェアリングオフやジスキネジア発現をおさえることが可能となります。ポンプはウェストポーチで腰に巻いたり、ショルダーバックなど肩にかけたりして携帯出来るため、日常生活や仕事も可能ですし、入浴時はポンプを取り外すことも可能です。本治療を検討してみたいという方は、かかりつけ医にご相談の上、当科を受診してください。

図1 パーキンソン病の進行と有効治療域

図2 レボドパ・カルビドパ配合経腸用液(LCIG; デュオドーパ®)療法 
 

5. その他の脳神経内科代表的疾患に対する検査・治療

 頭痛では、片頭痛・群発頭痛に対するトリプタン製剤自己皮下注射療法に対応しております。ボトックス治療は、脳梗塞後遺症以外に、眼瞼・顔面痙攣や頸性斜頸、脳性麻痺に対しても施行可能です。末梢神経障害、脊髄疾患では筋電図検査(腋窩神経、筋皮神経などあまり知られていない神経も含めた末梢神経伝導検査、針筋電図検査、体性感覚誘発電位など)も積極的に行っており、自己免疫疾患に対する免疫療法(ステロイドパルス療法、血漿交換療法、免疫グロブリン大量静注療法など)の経験も豊富です。

 脳神経内科では、症状や疾患に対し早期に的確な診断をつけるとともに、適切な対処方針を提示できるよう日々努力しております。


以上に関連する症状でお困りの方は是非当科を受診ください。

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